「ネットワークエンジニアとはどんな仕事をするの?」
「どんなやりがいがあるのか知りたい」
「持っていると有利になる資格はどれ?」
ネットワークエンジニアはその名のとおり「ネットワーク」に携わる技術職ですが、あまり詳しく知らない方も少なくないのではないでしょうか。
ネットワークはインターネット上のWebサイトやアプリケーションを行う上で欠かせない仕組みです。私たちが日々安定して利用できるのは、ネットワークエンジニアの方々が活躍してくれるからです。
この記事では以下の内容について、詳しく解説していきます。
- ネットワークエンジニアとは?
- 主な仕事内容
- やりがい
- やめとけと言われる理由
- 取得するとアピールになる資格
- エンジニアからのキャリアパス
10年以上もネットワークエンジニアに携わっている私が、実際の業務で扱っている内容を含めて解説していきますので、せひ最後までご覧ください。
ネットワークエンジニアとはネットワークを主に扱うエンジニア
ネットワークエンジニアは、企業や組織のITインフラに欠かせない「ネットワーク」を専門に扱うエンジニアです。
主に、社内外のシステムやサービスが安定して接続できるようにネットワーク環境を設計・構築し、運用・保守を行います。例えば、インターネット接続、社内LAN、VPN、セキュリティ対策などが業務範囲に含まれます。日常的にIT技術の進化に追随し、安定した通信環境を維持する役割を担うため、高度な専門知識が求められているのが特長です。
昨今では実機を管理しないクラウド技術や巧妙化するサイバー攻撃対策としてゼロトラストネットワークなど、新しい技術に対しても対応が求められている職種です。
ネットワークエンジニアの仕事内容5選
ネットワークエンジニアが日々行っている主な仕事内容は以下の5つです。
- 要件定義
- 設計
- 構築・テスト
- 運用・監視
- 保守
クライアントから求められる成果物もあることが多いため、各工程の説明に合わせて解説します。
1.要件定義
要件定義とは、企業や組織の目的、利用するシステムやアプリケーションの要件をヒアリングし、ネットワークに求められる性能やセキュリティなどの要件を明確化することです。
例えば、「社内外からの安全なアクセスを確保したい」「ビデオ会議を安定して行いたい」などのニーズに対し、適切な技術や構成を提案します。
要件定義はプロジェクトの一番初めに実施する工程です。プロジェクト全体の方向性を左右する重要な工程であり、技術力だけでなく、顧客や関係者との円滑なコミュニケーション能力も求められます。
要件定義工程で求められやすい主な成果物は以下のとおりです。
- 要件定義書
- 全体スケジュール表
2.設計
要件定義を基に、ネットワーク機器の配置や接続方法、使用するプロトコル、回線の種類などを詳細に設計します。
基本設計書にはネットワークトポロジー図、IPアドレスの割り当て、冗長化構成、セキュリティ対策などが記載されます。設計段階では、障害発生時のリスクや、将来的なシステム拡張の可能性も考慮しなければなりません。
最適なネットワーク設計を行うことで、運用後の障害リスクやメンテナンスコストを最小限に抑えられます。この工程では高度な技術知識が必要とされるため、ある程度の経験や知識を持った方が携われる工程とも言えます。
設計工程で求められやすい主な成果物は以下のとおりです。
- 基本設計書
- 物理ネットワーク構成図
- 論理ネットワーク構成図
- ネットワークラック搭載図
- ポート管理表
- IPアドレス一覧表
- テスト計画書
3.構築・テスト
設計書を基に、ネットワーク機器(ルーター、スイッチ、ファイアウォールなど)の設置・設定を行います。
具体的には、物理的な機器の接続、OSやファームウェアのインストール、ルーティングの設定、セキュリティポリシーの適用などを行います。
また、実際に通信テストを実施し、ネットワークが正常に動作していることを確認します。この工程では、迅速かつ正確な作業が求められ、トラブル発生時には即座に原因を特定し、解決する能力が必要です。
構築・テスト工程で求められやすい成果物は以下のとおりです。
- パラメータシート(設定した値をまとめた資料)
- テスト結果報告書
- トラブル一覧※発生したときのみ
4.運用・監視
ネットワークの運用・監視は、日常的にネットワークが正常に稼働しているかを確認し、異常が発生した場合には迅速に対応する工程です。
具体的には、ネットワーク監視ツールを活用し、通信トラフィック、遅延、パケット損失、セキュリティ侵害の兆候などを常時監視します。
定期的なログ分析や、システムのパフォーマンス改善も行います。トラブル発生時には迅速に原因を特定し、業務への影響を最小限に抑えることが重要です。
運用・監視工程で求められやすい成果物は以下のとおりです。
- 運用対応一覧
5.保守
保守業務では、定期的なネットワーク機器のメンテナンス、セキュリティパッチの適用、老朽化した機器の交換、障害発生時の復旧作業を行います。特に、システムダウンや大規模障害が発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。
また、システム拡張や新技術導入に伴うアップデート作業も保守業務に含まれます。安定稼働を維持するためには、定期的なバックアップやリスク管理が不可欠です。日常的に細かい点まで注意を払う姿勢が求められます工程です。
保守工程で求められやすい主な成果物は以下のとおりです。
- 保守対応一覧
他のエンジニアとの仕事内容の違いを一覧で紹介
ネットワークエンジニアとその他のエンジニアとの違いは以下のとおりです。
職種 | 主な業務内容 |
ネットワークエンジニア | ネットワークの設計・構築・運用 |
サーバエンジニア | サーバーの構築・運用管理 |
セキュリティエンジニア | セキュリティ対策・脆弱性管理 |
システムエンジニア | システム開発の要件定義・システム設計 |
クラウドエンジニア | クラウド環境の構築・運用 |
昨今では、クラウド利用が増えているため、ネットワークエンジニアでもクラウド環境を構築・運用を行うケースも増えています。実際に私自身もクラウド運用を行っております。
ネットワークエンジニアのやりがい3選
ネットワークエンジニアのやりがいや魅力は主に以下の3つです。
- 生活基盤に携われる
- 手に職をつけられる
- 未経験からでも目指しやすい
それぞれをみていきましょう。
生活基盤に携われる
ネットワークエンジニアは、私たちの生活やビジネスにはなくてはならない生活基盤に携われるのがやりがいの1つです。
インターネットがなければ、私たちの生活やビジネスは成り立ちません。オンライン会議、電子決済、クラウドサービスなど、あらゆるデジタルサービスがネットワークによって支えられており、これらの仕組みにはネットワークエンジニアが関わっています。
エンジニアが設計・運用するネットワーク環境は、多くの企業や一般ユーザーの日常生活を支える土台です。自分が携わったシステムが無事に稼働し、多くの人々の役に立っていると感じた瞬間に、大きな達成感ややりがいを感じやすくなります。
手に職をつけられる
ネットワークエンジニアとは、エンジニアと名がつくように手に職をつけられる技術職です。
高度な技術力と専門知識が求められる職種なため、一度スキルを身につけると、他業界や他企業でも応用が利き、転職市場でも高く評価されやすくなります。
また、技術トレンドが変わっても基礎知識や設計力は共通するため、一生使える「手に職」を持つことにもつながります。資格取得(CCNA、CCNPなど)を通じて技術力を証明できる点も、キャリア形成において大きな強みといえるでしょう。
未経験からでもキャリアアップを目指しやすい
ネットワークエンジニアは、IT業界未経験者でも比較的スタートしやすい職種です。初級資格である「CCNA」や「ITパスポート」などを取得することで、基礎知識が証明され、企業への就職や転職が成功しやすくなります。
また、運用・保守業務からキャリアをスタートし、経験を積んで設計・構築にステップアップするケースも少なくありません。努力次第で大きなキャリアアップが見込めるため、やる気と学ぶ姿勢があれば誰でも挑戦できる職種です。
ネットワークエンジニアがやめとけと言われる4つの理由
ネットワークエンジニアはやりがいのある魅力的な職種ですが、インターネット上で検索すると「やめとけ」と表示されて不安に感じた方も少なくないのではないでしょうか。やめとけと言われている理由を解説します。
- ささいなミスでも大トラブルになることがある
- 休日や深夜対応が必要な場面もある
- コミュニケーションをとるべき範囲が広い
- テレワークがしにくい
ネットワークエンジニアに興味がある方は、最後まで読むことで、大変さが理解できるはずです。ネットワークエンジニアになった後に後悔することがないようにしてください。
ささいなミスでも大トラブルになることがある
ネットワークエンジニアはささいなミスでも大きなトラブルになる場合があるため、精神的負担が大きくなりやすいことがやめとけと言われる理由の1つです。
ネットワークエンジニアの仕事は、非常に高い正確性が求められます。IPアドレスの設定ミスや、ケーブルの接続間違いが原因で、数千人規模の企業ネットワークが停止することもあります。一度障害が発生すると、ビジネスが停止し、企業に莫大な損害が発生するリスクがあります。
常に緊張感を持ちながら作業を行う必要があり、精神的な負担を感じることも少なくありません。
休日や深夜対応が必要な場面もある
休日や深夜対応が必要な場面が多くあると、プライベートの時間が削られるケースがあるため、やめとけと言われています。
多くの企業では、業務時間中にネットワークのメンテナンスを行うと業務が停止し、ビジネスに大きな影響が出てしまいます。そのため、ネットワーク機器のファームウェア更新やシステムのアップデートは、業務終了後や深夜、休日に行うことが一般的です。
さらに、ネットワーク障害は、突然発生することが多く、予測するのが難しいものです。特に企業のシステムが停止してしまった場合、迅速に復旧作業を行わなければなりません。そのため、休日や深夜に緊急連絡が入り、復旧作業を行うことがあります。
他にも海外拠点や顧客をサポートする場合、時差によって深夜や早朝に対応しなければならないこともあります。国際企業や多国籍クライアントを持つ企業では、24時間体制のサポートが求められることが一般的です。
ネットワークエンジニアにとって「いつでも対応できる姿勢」は必要ですが、その一方で、健康管理やワークライフバランスも重要です。企業によっては、労働環境の改善が進んでいる場合もありますので、選ぶ企業の働き方や体制も確認することが大切です。
コミュニケーションをとるべき範囲が広い
ネットワークエンジニアは、単に技術的な作業を行うだけではありません。クライアント、システムエンジニア、ベンダー、社内の他部署など、多くの関係者と連携しながら業務を進める必要があります。
ネットワークは企業全体のIT基盤です。そのため、他部署(IT部門、営業部門、経理部門など)との連携が不可欠です。例えば、新しいシステム導入時には、要件を確認し、最適なネットワーク環境を構築する必要があります。
ネットワーク機器の導入や回線敷設では、外部のベンダーや回線業者とのやり取りが発生します。納期調整や技術サポートの依頼、障害時の迅速な対応など、外部関係者との調整能力が求められます。
自社エンジニアではなく、外部企業向けにサービスを提供する場合、クライアントとの密なコミュニケーションが必要です。技術的な内容を分かりやすく説明するスキルや、クライアントの要望を正確に汲み取る能力が求められます。
大規模なネットワーク環境では、複数のエンジニアが関わることが一般的です。チームメンバーとの情報共有や連携がスムーズでないと、障害対応やプロジェクトの進行に遅れが生じる可能性があります。
このようにネットワークエンジニア業務の関係者は多岐に渡るため、コミュニケーションが苦手な方は、続けるのが難しいと感じてしまう恐れがあります。
テレワークがしにくい
テレワークがしにくい場合があるのも、やめとけと言われる理由の1つです。
上流工程に携わっていればテレワークは比較的しやすいですが、下流工程、特に保守がメイン業務の場合だと、トラブル発生時には素早く対応しなければなりません。現場に調査をしにいったり、交換用の機器を持って行ったりする必要があります。
クラウドやSDNなどの技術が浸透すれば物理的な機器を扱う画面が減るため、トラブル時に機器交換をしに行く必要はなくなりますが、ネットワークエンジニアは主に物理的な機器を扱うことの多い職種です。テレワークがしにくいケースがあるため、自分の希望する働き方ができるか注意しましょう。
ネットワークエンジニアに求められる資格4選
ネットワークエンジニアになるために事前取得が必須な資格はありません。しかし、ネットワークエンジニアは専門的な知識や技術力が求められる職種なため、身につけるためにも資格取得は有効は手段です。
- CCNA
- ITパスポート
- ネットワークスペシャリスト
- CCNP
これら4つはネットワークエンジニアのスキルを客観的に評価してもらいやすい資格です。ひとつずつ解説していきます。
CCNA
CCNAは、Cisco社が提供するネットワークエンジニア向けの初級資格です。ネットワークの基礎知識から、ルーティング、スイッチング、セキュリティ、ワイヤレスLAN、クラウド技術など、幅広い分野がカバーされています。
CCNA取得者は、ネットワーク運用・保守エンジニアとしての基本的な業務に対応できると見なされ、エントリーレベルの求人で有利になります。
資格名称 | CCNA |
資格の難易度 | 初級 |
主催団体 | シスコシステムズ |
資格の種類 | ベンダー資格 |
試験方式 | CBT(コンピュータ試験)方式 |
試験日 | 随時実施 |
受験費 | 42,900円 |
合格率 | 非公開 |
ITパスポート
ITパスポートは、IPA情報処理推進機構が主催する国家資格であり、ITに関する基礎的な知識を証明します。ネットワークだけでなく、情報セキュリティやIT戦略、法令知識などもカバーされています。
ITパスポートはエンジニアの初歩的な資格として広く認知されており、IT部門以外の職種でも評価される資格です。ネットワークエンジニアとしての知識の土台作りに最適です。
資格名称 | ITパスポート |
資格の難易度 | 入門 |
主催団体 | IPA情報処理推進機構 |
資格の種類 | 国家資格 |
試験方式 | CBT(コンピュータ試験)方式 |
試験日 | 随時開催 |
受験費 | 7,500円 |
合格率 | 50%程度 |
ネットワークスペシャリスト
ネットワークスペシャリストは、情報処理技術者試験の高度区分に位置付けられた国家資格です。ネットワーク設計や構築、運用管理、セキュリティ対策などの高度な知識とスキルが求められます。
この資格を持つエンジニアは、高度な技術力と設計力が証明されるため、大規模プロジェクトの設計やリーダーポジションへの昇進が期待されます。
資格名称 | ネットワークスペシャリスト |
資格の難易度 | 上級 |
主催団体 | IPA情報処理推進機構 |
資格の種類 | 国家資格 |
試験方式 | 筆記試験 |
試験日 | 年1回(4月の第3日曜日) |
受験費 | 7,500円 |
合格率 | 15%前後 |
CCNP
CCNPは、Cisco社が提供する中級~上級レベルの資格です。CCNAよりも高度な技術力が求められ、ネットワーク設計、運用、トラブルシューティングなどに関する知識が問われます。
CCNPは企業内で高い評価を受ける資格の一つであり、大規模ネットワークの管理やトラブルシューティングの現場でリーダー的な役割を担うことができます。
資格名称 | CCNP |
資格の難易度 | 中~上級 |
主催団体 | シスコシステムズ |
資格の種類 | ベンダー資格 |
試験方式 | CBT(コンピュータ試験)方式 |
試験日 | 随時開催 |
受験費 | コア試験:57,200円 コンセントレーション試験:42,900円 |
合格率 | 非公開 |
ネットワークエンジニアのキャリアパス3選
ネットワークエンジニアになった後に目指しやすいキャリアパスを3つ紹介します。
- スペシャリスト
- ジェネラリスト
- マネージャー
キャリアパスで悩んでいる方の参考になれば幸いです。ひとつずつ解説していきます。
スペシャリスト
スペシャリストは、特定の技術分野に特化して深い知識とスキルを持つエンジニアです。例えば、セキュリティネットワーク、クラウドネットワーク、SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)など、需要が高まっている分野に特化することで、希少価値の高い人材として活躍できます。
主な業務内容は以下のとおりです。
- 高度なネットワーク設計・構築
- セキュリティ対策の実施・脆弱性診断
- 特定技術分野におけるトラブルシューティング
求められるスキルは以下のとおりです。
- 高度なネットワークプロトコル知識
- 専門技術資格(例:CCNP、ネットワークスペシャリスト)
- 問題解決能力
一例としてキャリアの進み方は「運用・監視 → 設計・構築 → 専門分野特化 → 技術アドバイザー → コンサルタント」の流れがあります。
ジェネラリスト
ジェネラリストは、ネットワークだけでなく、サーバー、クラウド、セキュリティといったIT全般の知識を持ち、システム全体を俯瞰して最適化を行う役割を担います。企業のITインフラ全体を管理することが多く、技術面だけでなく経営視点も求められる立場です。
主な業務内容は以下のとおりです。
- システム全体の最適化・運用管理
- 複数領域にわたる技術支援
- プロジェクトの進行管理
求められるスキルは以下のとおりです。
- ネットワーク・サーバー・クラウドの広範な知識
- コミュニケーション能力
- プロジェクト管理能力
キャリアの進み方例は「運用・監視 → 設計・構築 → IT全般の管理 → 技術統括 → ITコンサルタント」の流れがあります。
ジェネラリストは、幅広い知識を武器に組織横断的な問題解決ができるため、大規模プロジェクトやコンサルティング業務で活躍する機会が増えます。
マネージャー
マネージャーは、技術者としての経験を活かし、プロジェクト全体の管理やチームのリーダーシップを発揮する役割です。メンバーの育成や業務の進行管理、コスト・リソースの最適化が主な業務となります。
主な業務内容は以下のとおりです。
- プロジェクトの計画・進捗管理
- チームメンバーの教育・評価
- 予算・コスト管理
- 経営層との折衝・調整
求められるスキルは以下のとおりです。
- リーダーシップ
- プロジェクトマネジメント能力(PMPなどの資格が有利)
- 経営層や顧客との折衝能力
キャリアの進み方の一例として「運用・監視 → 設計・構築 → チームリーダー → プロジェクトマネージャー → 部門責任者」があります。
マネージャーは、技術力だけでなく、人材マネジメントや経営的視点が重要です。キャリアの先にはCTO(最高技術責任者)やCIO(最高情報責任者)といった経営層への道も開けています。
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